心の片隅にチクチク響きます

以前に勤めていた会社があまりにハードワークだったため、うつ病で退社しました。
外にでるのもなかなか大変で、何もかもやる気がなくなり通院自体も辛くて自宅に引きこもる日々が続きました。

そんななか、主治医から病院のワークショップを勧められました。わたしは言われるがまま参加していましたが、何度めかのときに声をかけられました。
「前空いてる?一緒に座ろうよ。」

見ると同じくらいの20代半ばの男性でした。すらりと伸びた手足。透き通るような白い肌。少し低くて響く声。彼はワークショップの人気者のA君でした。
その後二人で折り紙での作業をして、作業所を後にしました。帰り道に沢山話してお互い駅で別れました。

次のワークショップの日、また同じテーブルにつきました。今度は帰りに一緒にベンチでコーヒーを飲んでメールアドレスを交換しました。
それから毎日メールのやり取りをし、次第に私はA君に惹かれて行きました。
A君もそうだったようでした。

「会いたい」
「君の声が聞きたい」

私たちのメールはお互いにそういった文字の羅列で綴られていきました。
しばらくだったある日メールの返信が来なくなりました。A君はワークショップにも来なくなりました。

私が何か気に触ることをしてしまったのかもと不安になり、作業所の担当の先生に聞きました。
はじめはいろいろ誤魔化されて教えてくれなかったのですが、わたしが事のいきさつを話すと「内緒よ」と言って別の部屋で教えてくれました。
A君は病状が悪化して措置入院になったとのこと。そして恋愛に依存する体質で、過去に何度も病院や作業所の女性に声をかけては恋愛感情を抱き、自分の病気を悲観し悪化して入院に至っているとのことでした。

A君が私に声を掛けたのも、甘い言葉のメールのやり取りもA君の病気のなせること。わたしは少しの間それに陶酔していましたが、先生に「目を冷ましなさい。貴女はここから抜け出せる人なのだから。彼のことは見張っていたのに被害にあってしまったわね。ごめんなさいね」と言われました。

その後A君がどうなったのかわかりません。わたしは3ヶ月くらいでその作業所を後にしてまた就職し、今度は無理しすぎないよう気を付けて働きました。
10年以上前の出来事ですが、いまだに心にチクチク響きます。

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